デュプランティスはなぜ6m15を跳べる?世界最強の跳躍力を生む身体の使い方
- 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都

- 8月17日
- 読了時間: 8分
2026年8月16日、イギリス・バーミンガムで開催された欧州陸上選手権が閉幕しました。
その最終日に大きな注目を集めたのが、男子棒高跳びのアルマンド・デュプランティスです。
スウェーデン代表のデュプランティスは、6m15をクリアして優勝。大会記録を更新する圧巻の跳躍を見せました。(ガーディアン)
しかも、これはデュプランティスにとって「限界に近い高さ」というわけではありません。
2026年3月には6m31を記録しており、現在の棒高跳び界で圧倒的な存在感を放っています。(Birmingham 26)
では、なぜデュプランティスはこれほど高く跳べるのでしょうか?
単純に「脚の筋力が強いから」ではありません。
そこには、助走スピード、身体のコントロール、地面から受ける力、ポールへの力の伝達、空中での身体操作など、さまざまな能力が関係しています。
今回は、デュプランティスの跳躍を「身体の使い方」という視点から考えてみます。
そもそも棒高跳びは「ジャンプ力」だけではない
棒高跳びというと、
「高くジャンプする競技」
と思われるかもしれません。
しかし、実際にはそれだけではありません。
棒高跳びでは、助走によって大きなスピードを生み出し、そのエネルギーをポールに伝え、ポールのしなりを利用して身体を上へ運びます。
つまり、
助走 → 踏切 → ポールへの力の伝達 → 空中動作 → バークリア
という一連の流れが重要です。
どこか一つだけが優れていても、6mを超えるような高さを安定して跳ぶのは簡単ではありません。
だからこそ、デュプランティスの凄さは「ジャンプ力」だけでは説明できないのです。
① デュプランティスの武器は「助走スピード」
棒高跳びで非常に重要なのが助走です。
高い位置から落ちてくる物体を考えても、最初にどれだけエネルギーを持っているかによって、その後の動きは大きく変わります。
棒高跳びでも同じです。
助走でスピードを高め、そのエネルギーを踏切からポールへ伝えていきます。
ここで大切なのは、
「ただ速く走ればいい」というわけではない
ということ。
速い助走をしながら、最後まで身体をコントロールしなければなりません。
つまり、
「速さ」と「正確さ」
の両方が必要になります。
これは短距離走にも共通しています。
速い選手は、ただ足を速く動かしているわけではありません。
身体の重心を前へ運びながら、地面から受けた力を次の動作につなげています。
デュプランティスの助走にも、こうした「スピードを無駄なく使う」という考え方が見えてきます。
② 踏切では「上に跳ぶ」だけではない
高く跳びたいと思ったら、普通は上方向へ強くジャンプしたくなります。
しかし棒高跳びでは、それだけではありません。
助走で得た水平へのスピードを、踏切からポールを介して上方向への動きへ変換していきます。
ここが非常に難しいところです。
「前へ進む力」と「上へ向かう力」。
この2つをどうつなげるかが重要になります。
これは子どもの走り方にもつながる考え方です。
走るときも、
「地面を強く蹴ればいい」
だけではありません。
地面から受けた力を、身体の動きの中でどう使うかが重要です。
③ 「力を入れる」より「力を伝える」
デュプランティスを見ていると、身体が非常にしなやかに動いていることに気づきます。
もちろんトップアスリートですから、非常に高い身体能力を持っています。
しかし、単純に「ものすごい力を出している」と考えるだけでは、本質を見落としてしまいます。
重要なのは、
発生させた力を、次の動作へどれだけ効率よく伝えられるか。
です。
脚で生み出した力。
身体の重心移動。
腕や肩の動き。
ポールとの接触。
そして空中での身体操作。
これらが連動することで、大きなエネルギーを効率よく使うことができます。
これは野球の投球にも、サッカーのキックにも、短距離走にも共通する考え方です。
「力が強い人=必ず速い・高く跳べる」
ではありません。
力をどう使うか。
ここがスポーツでは非常に重要なのです。
④ 身体の「しなり」を使う
棒高跳びでは、ポールが大きくしなります。
そして、そのポールの反発を利用して身体を上へ運びます。
しかし、ポールだけがしなっているわけではありません。
アスリート自身の身体も、動作の中でしなやかに使われています。
ここで重要なのが、
「固めすぎない」
ということです。
身体をガチガチに固めてしまうと、動作の連続性が失われます。
一方で、必要な部分では身体を安定させながら、動くべき部分は柔軟に動かす。
この「安定」と「柔軟性」のバランスが重要です。
デュプランティスの跳躍が美しく見える理由の一つも、身体全体が一つの流れとして動いているからではないでしょうか。
⑤ 空中での身体操作がすごい
棒高跳びは、踏切までが終わりではありません。
むしろ、そこからが本番です。
身体をポールに合わせて回転させ、身体の位置を変え、バーを越えていきます。
ここでは、
・空間認知能力
・身体感覚
・バランス能力
・タイミング
・柔軟性
・体幹のコントロール
など、さまざまな能力が必要になります。
「高く跳ぶ」という一つの結果の裏側には、非常に複雑な身体操作が隠されています。
デュプランティスから学べる「速く走る身体」
ここまで見ると、
「棒高跳びと走り方に何の関係があるの?」
と思うかもしれません。
実は大きく関係しています。
棒高跳びのスタートは助走です。
そして助走ではスピードを生み出します。
つまり、デュプランティスのパフォーマンスを見ることで、
「速く走るためには、身体をどう使えばいいのか」
というヒントも得られます。
速い選手は、足だけで走っているわけではありません。
頭、胸、骨盤、脚、腕など、身体全体を連動させています。
そして、身体の重心を効率よく前へ運んでいきます。
子どもの「ジャンプ力」や「足の速さ」にもつながる
小学生や中学生のスポーツ指導でも、
「ジャンプ力を高くしたい」
「足を速くしたい」
「瞬発力を高めたい」
という相談は多くあります。
そこで大切なのは、いきなり強い負荷をかけることだけではありません。
まず、
「自分の身体をどう動かせば、楽に前へ進めるのか?」
「どうすれば地面から受けた力を次の動作につなげられるのか?」
を体験することです。
身体の使い方が変わるだけで、同じ筋力でも動きが変わることがあります。
デュプランティスの凄さは「身体能力+技術」
デュプランティスは、もちろん圧倒的な身体能力を持っています。
しかし、6m15という高さを考えるとき、
「筋力がすごい」
「ジャンプ力がすごい」
だけでは説明できません。
助走スピード。
踏切。
ポールへの力の伝達。
身体のしなり。
空中での回転。
バーを越えるタイミング。
これらすべてが組み合わさっています。
そして、それを極めて高いレベルで再現できる。
そこに世界トップレベルの凄さがあります。
6m15という高さを「身体の使い方」で見る
6m15。
数字だけを見ると、ただ「ものすごく高い」という印象です。
しかし、その数字を生み出す過程を見ると、スポーツの本質が見えてきます。
速く走る。
↓
力を地面から受ける。
↓
その力を身体全体へ伝える。
↓
道具であるポールへ伝える。
↓
反発を利用して身体を上へ運ぶ。
↓
空中で身体をコントロールする。
↓
バーを越える。
一つひとつの動作がつながっています。
これは、MORIトレが大切にしている「身体全体を使って動く」という考え方にも通じます。
まとめ
2026年の欧州陸上選手権で、デュプランティスは6m15を跳び、大会記録を更新しました。(ガーディアン)
さらに2026年シーズンには6m31という世界トップレベルの記録も残しています。(Birmingham 26)
彼の凄さを一言で表すなら、
「高く跳ぶ能力」だけではなく、「身体全体の力を無駄なく使う能力」
にあるのではないでしょうか。
助走でスピードを生み出す。
踏切で力を伝える。
ポールの反発を利用する。
身体をしなやかに動かす。
そして空中で身体をコントロールする。
こうした一連の動作が、6mを超える世界へつながっています。
そして、この考え方はトップアスリートだけのものではありません。
小学生のかけっこ。
中学生の陸上競技。
サッカーのスプリント。
野球の走塁。
バスケットボールのジャンプ。
さまざまなスポーツで、
「力を入れる」から「力を上手に使う」へ。
この視点を持つことは、大きな可能性を生みます。
次にデュプランティスの跳躍を見るときは、ぜひ「何cm跳んだか」だけではなく、
「助走から踏切まで、身体がどう動いているのか?」
にも注目してみてください。
世界最高峰のアスリートの動きには、子どもたちのスポーツ上達につながるヒントがたくさん隠されています。




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