継続させない、効果を出させない、「最新」に目を奪わせる──資本主義のしくみとその罠
- 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都

- 7月19日
- 読了時間: 4分
私たちの日常には、常に「新しい何か」が現れます。新商品の広告、新しい健康法、最新のトレンド、話題のアプリ、人気急上昇のメソッド……。
「これが効く!」「これが今の正解!」「もうこれなしでは時代遅れ!」そんな言葉が連日私たちの目や耳に飛び込んできます。
しかし、ここに大きな仕掛けがあります。
それは、「継続させない」「効果を実感させない」「最新に乗り換えさせ続ける」ことで、私たちを永遠に“消費者”の立場に留めておくという資本主義の構造です。
なぜ「継続」されては困るのか?
企業やマーケティング側からすれば、顧客が1つの商品やサービスで満足し、継続してしまうことは、長期的には利益の減少につながる可能性があります。
一度買って満足されてしまえば、その後の購入機会は減ります。つまり、商品が「完成された本物」になるほど、それは“売れにくくなる”という皮肉を生むのです。
たとえば、フィットネス業界ではどうでしょうか?
・1ヶ月で効果を出すというキャッチコピー
・新発売のサプリメント
・画期的なトレーニンググッズ
これらは本当に効果があるのでしょうか?
多くの場合、その「効果」は曖昧で、継続的に使わないと実感できない設計になっています。しかも、途中でやめてしまえば当然結果は出ません。すると人はこう思います。
「この方法じゃなかったのかも。じゃあ次はこっちの新しい方法を試してみよう」
このように、継続できない自分を責めながら、常に“次の正解”を探してしまうのです。ここに、資本主義的消費構造の巧妙な罠があります。
「飽きさせる仕組み」と「新しさへの依存」
人は「新しいもの」に惹かれる性質を持っています。心理学では「ノベルティ効果(新奇性効果)」と呼ばれ、これは脳が“新しさ”に快感を覚える反応です。
企業はこの性質を理解し、「あえて飽きるように」設計します。
・1週間で終わるような短期的なプログラム
・アップデートで見た目だけ変わるアプリ
・次々に発売される「最新版」
これは、商品の内容や本質的な価値よりも、「新しいことをしている感覚」を優先させるための戦略です。
すると消費者は、飽きる前に「新しいもの」に乗り換えたくなります。結果として、継続や習慣化は難しくなり、本来出せるはずの効果や成長はどんどん先延ばしになります。
続けさせないことで利益が回る世界
ここで一度、こうした構造を別の視点から見てみましょう。
• ダイエットが継続されず、効果が出ない → 次の商品が売れる
• 勉強法を変えてばかりで身につかない → 新しい教材が売れる
• 道具やウェアだけが増えて実力がつかない → また買ってしまう
つまり、「ゴールに到達できない」ように誘導することで、常に市場が動き続けるようになっているのです。
ここにあるのは、“成長”や“成果”ではなく、“消費の循環”です。
人が何かに本気で取り組み、継続し、習得し、成果を出したとしたら、その人はもう「消費者」ではなくなってしまいます。
だからこそ、どこかで「続けることを邪魔する力」が働いているのです。
資本主義が否定する「地味な継続」
成果や成長というのは、本来とても地味なもので、日々の積み重ねの中にしか存在しません。
しかし、資本主義はその「地味さ」を嫌います。なぜなら、地味で変化がないと、広告も売上も伸びないからです。
だから、
• 本を1冊じっくり読むより「5分でわかる要約動画」
• 同じ運動を3ヶ月続けるより「1週間で変わるトレンドメニュー」
• 小さな日記を続けるより「AIで一瞬診断」
こうした「速さ・派手さ・簡単さ」がもてはやされるのです。
ですが本当の成長や効果は、こうした即効性とは真逆の場所にあります。
「消費者」から「実践者」へ
この構造から抜け出す鍵は、「あえて変えない」こと、「あえて継続すること」です。
自分で「これ」と決めたやり方を、少なくとも3ヶ月続けてみる。
SNSの流行を横目に、自分のスタイルを守る。
毎日コツコツの中にある成長を、自分の目で見つける。
この姿勢に立つことで、私たちは“ただの消費者”から、“実践者”へと立場を変えることができます。
もちろん、資本主義を完全に否定する必要はありません。私たちの生活に豊かさをもたらしたのも事実です。しかし、その裏側の構造を知った上で、自分の選択をすることが、これからの時代には必要なのです。
まとめ:地味こそ最強
「効果が出ない」のではなく、「出る前にやめさせられている」
「自分に合っていない」のではなく、「選ばされたものに飛びつかされている」
「意志が弱い」のではなく、「仕組みがそう作られている」
このことに気づけば、あなたはもう、振り回される側ではなくなります。
成果とは、華やかな広告やSNSの裏にある、地味な継続の先にあります。
「続けること」を、もっと評価しよう。「変えないこと」に、もっと価値を置こう。
流されず、惑わされず、自分の軸で動ける人こそ、本当に効果を出せる人なのです。
せください!

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