top of page

筋力は自分で頑張らないと動かない。しかし重力を使えば、勝手に落ちて、しかも高いところから落とせばどんどん速くなる

  • 執筆者の写真: 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
    森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
  • 7月20日
  • 読了時間: 5分

筋力は自分で頑張らないと動かない。しかし重力を使えば、勝手に落ちて、しかも高いところから落とせばどんどん速くなる


私たちの身体を動かすには「筋力」が必要です。たとえば腕を持ち上げる、ジャンプする、走るといった動きは、すべて筋肉を収縮させることで実現しています。しかし、筋肉は「頑張らないと動かない」仕組みになっています。命令(意思)を出して、初めて力を発揮するわけです。

つまり、筋肉はサボれば動かず、意識して動かすことで初めて働きます。ここが人間の面白くも厄介なところです。


ところが、自然界には「自分で頑張らなくても働いてくれる力」が存在します。それが「重力」です。


重力とは「勝手に働く力」


地球には万有引力があり、すべての物体は地球の中心に向かって引っ張られています。この力があるからこそ、リンゴは木から落ちるし、人間も地に足をつけて生活できます。何かを手から離せば、何もせずとも「ストン」と地面に落ちていきます。


つまり、重力は「自分で頑張らなくても働く力」。私たちの意思とは関係なく、自然に、しかも確実に作用する力です。


ここで注目したいのは、筋力と重力は「動かす仕組み」がまったく違うということです。

• 筋力 → 自分の意思で動かす。努力が必要。

• 重力 → 意思に関係なく勝手に動く。努力不要。


高いところから落とせば速く落ちる


そして、重力にはもう一つの特徴があります。それは、「高さがあるほど、落ちるスピードがどんどん増していく」という点です。

高い場所から物を落とすと、途中から目に見えてスピードが増していくのが分かります。これは、落下する物体が重力によって加速し続けているからです。


これを「自由落下運動」といい、物理学的には「9.8m/s²」という加速度で落下していきます。つまり、1秒ごとに秒速が約9.8メートルずつ増えていくということです。


ジャンプしてその場に立ち戻るとき、自分の体が下へ向かって「どんどん速く」落ちていくのを体感したことがあるはずです。


「頑張らずに動く」ことの意味


ここで注目したいのは、私たちがこの重力を「うまく利用すれば」、筋力をそれほど使わずに大きな力を生み出せるということです。


たとえば次のような動きは、重力の活用の良い例です。

• ジャンプ着地の瞬間:体は重力に引かれて下に引き込まれる。その勢いを吸収することで、自然と膝や股関節が曲がります。

• 坂道を駆け下りる動き:筋力よりも重力によって加速し、それをコントロールする力が必要になります。

• 走るときのピッチやストライド:上体を前に傾けることで、重心が前に倒れ、脚が自然に出るようになる。これも重力の力を活かした動きです。


陸上選手やダンサーが使う「落下の力」


一流のスプリンターやダンサーたちは、筋力だけで動いているわけではありません。むしろ、重力を味方にすることで、最小限の力で最大限のスピードやパフォーマンスを引き出しているのです。


たとえば、ウサイン・ボルトが走るとき、スタート直後の数歩は上体が深く前傾しています。これは前に倒れこむ「落下のエネルギー」を使って、地面に足を突き刺し、効率よく加速しているのです。


また、バレエや体操競技の選手も、ジャンプの着地や回転の動作において、重力の使い方を熟知しています。自分の重さが生むエネルギーをうまく流れに乗せ、無駄な力を使わずに動いているのです。


日常生活でも「重力を味方にする」


これは何もアスリートだけの話ではありません。私たちも日常の中で、重力を活かせる場面がたくさんあります。


たとえば、

• しゃがむときは、重力に逆らわず「ストン」と落ちてから、筋力でコントロールする。

• 子どもが滑り台を滑るように、身体の重さを「落下」に任せて動く。

• 階段を降りるときも、重力を意識すれば楽に降りられる。


このように、「頑張って力を入れる」ことだけでなく、「うまく脱力して、重力を味方につける」ことで、余計な筋肉の使い方をせずに済みます。


トレーニングへの応用


筋トレや走りの練習でも、重力の原理を理解しているかどうかで成果が変わってきます。


たとえばスクワット。

重力を感じながら「落ちていく動き」を受け入れることで、より自然で関節に優しい動きになります。また、反発を使うことで、効率よく立ち上がる力を引き出せます。


走りのトレーニングでは、重心を少し前に傾けるだけで、体が「勝手に」前へ進もうとします。これを利用すると、無理に脚を前に出そうとしなくても、自然と足がついてきます。

この感覚がつかめると、力任せに走るのではなく、「軽やかに速く走る」感覚がつかめるようになるのです。


筋力と重力、両方を知ることがパフォーマンス向上のカギ


私たちは、筋力だけに頼って身体を動かしてしまいがちです。もちろん筋力は大切ですし、鍛えることでできる動きも増えていきます。


しかし、重力という「自然が与えてくれているエネルギー」を無視するのは、非常にもったいない話です。

• 自分で頑張らなければ動かない筋力

• 勝手に働き、加速してくれる重力


この2つの性質を理解し、上手に使い分けられるようになることが、パフォーマンス向上、怪我の予防、そして効率の良い身体の使い方につながります。


まとめ


筋力は、意識して初めて発揮される「努力のエネルギー」です。一方、重力は意識しなくても常に働いてくれる「自然のエネルギー」。この重力をただの敵と思わず、味方として使えるようになると、動きは一変します。


スポーツでも、日常でも、「頑張りすぎない身体の使い方」を習得するためには、重力という見えないパートナーをもっと知ることがカギになります。


重力を味方に、無駄のない、美しい動きを手に入れましょう。


最新記事

すべて表示
「“怪物高校生” 藤木勇我 — “井上尚弥の再来”と呼ばれる男の強さの秘密と、プロへの期待」

日本ボクシング界にまた、新たな怪物が現れた。17歳にして国内最高峰大会を制し、無敗を誇る高校生ボクサー、藤木勇我。 その圧倒的な強さとポテンシャルが、すでに“井上尚弥の再来”と呼ばれている理由とは──。 今回は、藤木の現在地と未来への可能性、その強さの秘密を徹底分析する。

 
 
 
「江戸走りで足は速くなる?50m・100mから野球・サッカー・ラグビーまで使える“脱力走法”を徹底解説!」

「江戸走りで足は速くなるのか?」 これはここ数年、陸上競技や球技スポーツで注目が高まっているテーマです。江戸時代の飛脚が長距離を高速で走り続けたという走法ですが、その本質は「脱力」「軸の安定」「骨盤の効率的な動き」。これは現代のスプリント理論や球技の動きとも非常に近いものがあり

 
 
 
投手に本当に必要なのは球速ではなく「タイミング操作」|打者の予測を崩す投球とは

野球の世界では「球が速い投手=すごい」というイメージが根強く残っています。 確かに速球は魅力的で、観客の目を引き、投手自身の武器にもなります。しかし、実際にバッターを抑え続けられる投手は、必ずしも最速を誇る投手ばかりではありません。むしろ、打者が最も嫌がるのは “タイミングを外

 
 
 

コメント


© 2023 by Nicola Rider.
Proudly created with Wix.com

 

bottom of page