競技スポーツの筋トレ、どこまでやればいい?
- 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
- 7月14日
- 読了時間: 4分
競技スポーツの筋トレ、どこまでやればいい?
終わりのないトレーニングと“必要最低限”の考え方
「筋トレって、どこまでやれば十分なんだろう?」
スポーツを真剣に続けている人ほど、こうした疑問に一度はぶつかるものです。トレーナーの指導、SNSの投稿、プロ選手の筋肉量……どれも影響力があり、自分ももっと鍛えないといけないのでは?と思ってしまいます。
しかし、本当に必要な筋トレは“必要最低限”であるという考え方があります。今回は、スポーツ競技において「筋トレはどこまでやればよいのか?」というテーマを、競技特性やトレーニングの本質とともに掘り下げていきます。
筋トレに「ゴール」はない。でも「限度」はある
筋肉は鍛えれば鍛えるほど大きくなります。限界はあるとはいえ、人間の筋肉はトレーニング次第で際限なく肥大化していきます。
しかし、筋肉量が多ければ多いほど競技力が上がるのか?というと、決してそうではありません。
むしろ、競技によっては筋肉を増やしすぎることで逆効果になる場合もあります。スピード、バランス、可動域、敏捷性といった他の要素が失われ、結果的にパフォーマンスが低下してしまうのです。
「強い体」と「競技力が高い体」は違う
よくある誤解として、「見た目が強そう=競技力が高い」という認識があります。確かに筋肉がつけば一時的にパワーは増しますが、スポーツ競技において重要なのは“動きの質”です。
• 大きな筋肉があっても速く動けなければ意味がない
• 力があってもタイミングが悪ければパフォーマンスは落ちる
• 筋量が増えても関節の動きが悪くなればケガのリスクが上がる
つまり、競技で必要なのは“ちょうどよく使える筋肉”であり、過剰な筋肉ではないのです。
必要最低限の筋トレとは?
「必要最低限」と聞くと、なんだか楽をしているような印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、ここで言う“必要最低限”とは、目的に合致した「効率の良い筋トレ」のことを意味します。
競技パフォーマンスを最大化するには、以下のような視点が必要です。
1. 競技特性に合っているか?
たとえば…
• 短距離走なら、地面反力を高める下半身の出力
• サッカーやラグビーなら、切り返しや当たり負けしない体幹
• 野球やテニスなら、肩関節や回旋筋群の安定性
自分の競技・ポジションに必要な筋力を、的確に狙って鍛えることが最優先です。
2. 「重さ」よりも「使い方」
ベンチプレスが100kg挙げられることと、パンチ力が強いことは別です。競技動作で筋肉を「どのように使うか」が重要。
そのためには、**筋トレと競技動作を結びつける「動作の意識」や「連動性トレーニング」**が不可欠です。
やりすぎの弊害
● スピード・反応の低下
筋肉が増えすぎると、可動域が狭くなり、スピードや俊敏性が低下します。とくに重量を重視するトレーニングを過剰に行うと、動きが鈍くなるというデメリットがあります。
● フォームの乱れ・技術の阻害
筋力に頼ったフォームが身についてしまうと、競技動作が崩れます。技術の洗練と筋力のバランスを保つことが大切です。
● ケガのリスク増加
筋肉が強くなっても、腱や関節、靭帯の耐久性が追いつかなければケガのリスクが高まります。筋トレによって体のバランスが崩れることもあるのです。
「筋トレが目的化」していないか?
これは競技者によくある落とし穴です。
• 筋トレが楽しくなって、技術練習をおろそかにする
• インスタに筋肉写真を載せたくて鍛える
• 周囲と比べて焦ってどんどん負荷を上げる
本来の目的は、「競技力を上げること」です。筋トレはあくまで手段であって、目的ではないことを忘れないようにしましょう。
「維持フェーズ」に入るという考え方
筋トレは、「鍛え続けて増やすフェーズ」と「維持して安定させるフェーズ」があります。
必要な筋力がある程度整ったら、あとはその筋力を落とさず、ケガをしないよう保つ“維持のためのトレーニング”に切り替えてよいのです。
これにより、他の練習(技術・戦術・回復など)に時間を回すことができ、結果として競技力はより高まります。
結論:競技力を最大化する筋トレは「最小限で最大効率」
筋トレに終わりはありません。やればやるだけ鍛えられます。しかし、それは競技の成績向上とイコールではありません。
“必要最低限”の筋トレとは、自分の競技に合った、パフォーマンス向上に直結するトレーニングだけを選び、正確にやり込むこと。
この考え方を持てば、無駄のない身体づくりができ、ケガも減り、結果的に競技力も向上します。
✅ 今日からできる見直しポイント
• 今の筋トレは、自分の競技の動きに直結しているか?
• やりすぎて疲労が溜まり、他の練習に支障が出ていないか?
• 本当に必要な筋トレだけを選べているか?
トレーニングは、強さを追い求める旅のようなもの。でも、最短ルートで目的地に着く方法があるなら、それに越したことはありません。必要最低限の筋トレで、最大の競技力を引き出しましょう。
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