足を速くするために相撲の「てっぽう」は効果的か?|走りに活きる和のトレーニング
- 森 雅昭(スポーツ家庭教師/かけっこ走り方教室/体操教室枚方市)
- 5月3日
- 読了時間: 4分
「てっぽう」といえば、相撲の稽古の中でも特に基本とされる動作のひとつです。四股(しこ)と並んで、伝統的な身体づくりの代表格ともいえるこの動作が、実は「足を速くする」ためのトレーニングとしても注目されているのをご存じでしょうか?
この記事では、相撲の「てっぽう」の動きが短距離走やスプリント力にどのような影響を与えるのかを、運動学的・身体操作の観点から詳しく解説します。
「てっぽう」とは?動作の基本を確認
まず、「てっぽう」とは何かを簡単に説明しましょう。
てっぽうは、柱や壁などに対して、交互に腕を押し当てながら前に出ていくトレーニングです。しかし、実際には腕を鍛えるだけの動きではありません。上半身と下半身の連動、股関節・体幹・足裏まで、全身を使う稽古法です。
動作の中では、以下のようなポイントがあります。
• しっかりと足を踏みしめる(地面を捉える)
• 重心を上下にぶらさず、滑らかに移動する
• 体幹を使ってバランスを保つ
• 片足で支えながら反対の足を大きく前に出す
つまり、これは単なる腕立てではなく、**「片足で体を支える」「前へ進む」「地面を押す」**という、走る動作に非常に近いトレーニングなのです。
てっぽうの効果|走りのパフォーマンスにどう関係する?
では実際に、てっぽうが走力アップにどのような効果をもたらすのかを分解して考えてみましょう。
1. 地面を「押す力」を養う
足が速い人ほど、地面に対して強く、素早く力を加えることができます。てっぽうでは、柱を押す際に自然と足裏で地面を踏ん張る力が必要になります。このとき、股関節から足裏までが連動して「押す力」を養うトレーニングになります。
この「地面反力」を効率的に得られる体の使い方は、短距離走では非常に重要です。
2. 片足で体重を支えるバランス強化
走るときは常に片足で体重を支えながら、次の一歩へと移行します。てっぽうでは一方の足で体を安定させ、もう一方を素早く踏み出す動作が繰り返されます。この動きが、走る際のバランス感覚や安定性の向上につながります。
特に、姿勢が崩れやすい子どもや初心者のランナーにとっては、この片足バランスの獲得がスピードアップの土台となります。
3. 体幹と股関節の連動
てっぽうを正しく行うと、単に足を前に出すのではなく、骨盤・体幹・股関節が連動した動きになります。この一連の動作がスムーズになることで、走りの「動き出し」や「ピッチ(回転速度)」にも良い影響を及ぼします。
実際に走りのピッチが速い選手ほど、体幹から下半身への連動がスムーズです。
てっぽうを取り入れる際のポイント
「足を速くしたいからてっぽうをやろう」と思っても、ただ真似するだけでは効果は限定的です。以下のポイントに気をつけて実践することが大切です。
・フォームを意識する
体を上下に揺らさず、まっすぐ前に進むこと。腰が落ちたり、左右にぶれたりしないよう、鏡の前で動作を確認したり、動画を撮ってフォームチェックをするのが効果的です。
・左右均等に行う
片側ばかり力が入るクセがある場合、走りにも偏りが出てしまいます。左右均等に丁寧に行うことが、足の回転スピードや左右バランスを整える近道です。
・スピードを意識して行う
ある程度フォームが安定したら、今度はスピードやリズムを意識して行いましょう。早く正確にリズム良くてっぽうができるようになると、走りにもキレが出てきます。
他のトレーニングと組み合わせるとさらに効果的
てっぽうだけでも効果はありますが、さらに以下のようなトレーニングと組み合わせると、相乗効果で足が速くなりやすくなります。
• もも上げダッシュ(股関節とスピード強化)
• ラダートレーニング(リズムと俊敏性アップ)
• ヒップリフト系トレーニング(お尻・ハムストリングスの強化)
• 体幹トレーニング(フォームの安定性向上)
特に、小学生や中学生など、発達段階にある子どもたちには「遊びながらバランスを取る」ような感覚でてっぽうを取り入れると、効果が出やすいです。
まとめ|「てっぽう」は走りに効く、和のスプリントトレーニング
相撲の稽古である「てっぽう」は、一見すると走りとは無関係のように見えるかもしれません。しかし、その本質には、**走るために必要な「地面を押す力」「体の連動」「バランス」「スピード」**がしっかりと含まれています。
日本古来の身体づかいには、現代のスポーツに活かせるヒントがたくさんあります。てっぽうを正しく取り入れれば、短距離走やかけっこのパフォーマンスにも大きな変化が期待できます。
足を速くしたい、フォームを改善したい、そんな方は一度、てっぽうを日々のトレーニングに加えてみてはいかがでしょうか?
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