top of page

腕を振らない方が短距離は速く走れるかも?|さまざまな角度から徹底検証

  • 執筆者の写真: 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
    森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
  • 4月29日
  • 読了時間: 4分

短距離走では「腕をしっかり振れ!」と指導されることが多いですが、近年、一部では「腕をあえて振らないほうが速くなるのでは?」という意見も聞かれるようになっています。本当にそうなのでしょうか?今回は、「腕を振らない走り」が短距離走にどんな影響を与えるのか、さまざまな視点から深く検証していきます。


1.なぜ短距離では「腕を振れ」と言われるのか?


まず基本的な前提を整理しましょう。

短距離走で腕を振ることには、以下のような役割があります。

• バランスをとるため

• 体を前に推進させるため

• 脚の動きをスムーズにするため(連動性)

• リズムを生み出すため


腕の振りは、特に100m走や50m走など、爆発的なスピードを出すために重要な要素と考えられています。

実際に世界トップのスプリンターたちも、力強く、素早い腕振りをしています。では、なぜ「振らないほうが速いかも?」という考え方が出てくるのでしょうか?


2.腕を振らないとどうなる?メリット・デメリット


あえて腕を振らずに走ることのメリットとデメリットを整理してみます。


メリット


• 上半身の余計な力みを減らせる

→特に初心者や子どもは、腕に力が入りすぎて走りが硬くなることがあります。腕を振らない意識を持つことで、逆にリラックスした動きができる場合があります。

• ストライド重視になりやすい

→腕を使わない分、下半身でしっかり地面を押す意識が高まるケースもあります。


デメリット


• バランスが崩れる

→スピードが出るほど、左右の足運びによる体のねじれが大きくなります。腕を振らないとそのねじれを補正できず、ふらついたりスピードがロスしたりします。

• ピッチ(回転数)が落ちる

→腕の動きが減ると脚の動きも遅れやすくなり、回転数が落ちてタイムが悪化するリスクがあります。


3.科学的データから見る「腕の振り」とスプリントスピード


いくつかのスポーツ科学研究では、次のような結果が報告されています。

• 腕をしっかり振った場合と、腕を固定した場合では、腕を振ったほうが明らかに速かった。

• 腕の振りが制限されると、バランスを保つために骨盤周りや脚の筋肉の負担が増え、効率が落ちる。

• スタート直後(加速局面)では特に腕の振りの貢献度が大きい。


つまり、トップスピード領域においても、特にスタート~加速段階では、腕を積極的に使う方が有利といえそうです。


4.「振らない方が速い」と感じるパターンとは?


それでも、「腕を振らないほうが速く感じた」というケースが存在します。

その理由を掘り下げてみましょう。


(1)力みが減った結果、自然な走りになった


力任せに腕を振っていた人は、腕を「振らない」と意識することで力みが取れ、結果的にスムーズなフォームになった可能性があります。


(2)過剰な動作を修正できた


大きすぎる腕振り(振り上げ・振り下ろし)をしていた人は、動きがコンパクトになったことで効率が改善された可能性があります。


(3)短距離ではなく、超短距離(5〜10m)なら効果的な場合がある


スタート直後の数歩だけなら、腰の前傾姿勢を維持するために、腕の大きな動きが不要な場合もあります。この局面に限って言えば、「腕を意識しない=速くなる」というケースがあるかもしれません。


5.一流選手の腕振りはどうなっているか?


では、世界トップクラスのスプリンターたちはどうでしょうか?


たとえばウサイン・ボルト選手は、身長が高い割に、非常にコンパクトで効率的な腕振りをしています。

桐生祥秀選手、サニブラウン選手なども、腕は振っていますが「無駄な大きさ」ではなく「推進力に直結する動き」をしています。


つまり、一流選手も「腕を振らない」のではなく、「無駄な腕振りをしていない」だけなのです。

ここを勘違いしてしまうと、フォームの崩れやタイムの悪化を招きかねません。


6.結論|腕を振らない方が速くなるのは「一時的」なケースにすぎない


まとめると、

「腕を振らない方が短距離が速くなる」という現象は、特定の条件下でのみ見られることが多いと考えられます。

• 初心者が力みを抜くための一時的な意識付け

• 超短距離(5〜10m)のスタート局面

• 過剰な腕振りを矯正したいとき


しかし、本格的に速く走るためには、やはりしっかりとした腕振りが必要不可欠です。

ポイントは、「大きく振る」ことではなく、「自然に、推進力につながる振り方」を身につけることです。


もし「腕を振ると力んでしまう」「走りがぎこちなくなる」という人は、一度「振らないつもりで走ってみる」練習を取り入れてみるのもよいでしょう。ただし最終的には、正しい腕振りを習得することが、記録向上への近道です。


まとめ


短距離走における腕振りは、単なる「動き」ではありません。

体のバランスをとり、脚の動きを引き出し、スピードを最大化するための重要な要素です。


「腕を振らない方が速いかも?」

最新記事

すべて表示
「“怪物高校生” 藤木勇我 — “井上尚弥の再来”と呼ばれる男の強さの秘密と、プロへの期待」

日本ボクシング界にまた、新たな怪物が現れた。17歳にして国内最高峰大会を制し、無敗を誇る高校生ボクサー、藤木勇我。 その圧倒的な強さとポテンシャルが、すでに“井上尚弥の再来”と呼ばれている理由とは──。 今回は、藤木の現在地と未来への可能性、その強さの秘密を徹底分析する。

 
 
 
「江戸走りで足は速くなる?50m・100mから野球・サッカー・ラグビーまで使える“脱力走法”を徹底解説!」

「江戸走りで足は速くなるのか?」 これはここ数年、陸上競技や球技スポーツで注目が高まっているテーマです。江戸時代の飛脚が長距離を高速で走り続けたという走法ですが、その本質は「脱力」「軸の安定」「骨盤の効率的な動き」。これは現代のスプリント理論や球技の動きとも非常に近いものがあり

 
 
 
投手に本当に必要なのは球速ではなく「タイミング操作」|打者の予測を崩す投球とは

野球の世界では「球が速い投手=すごい」というイメージが根強く残っています。 確かに速球は魅力的で、観客の目を引き、投手自身の武器にもなります。しかし、実際にバッターを抑え続けられる投手は、必ずしも最速を誇る投手ばかりではありません。むしろ、打者が最も嫌がるのは “タイミングを外

 
 
 

コメント


© 2023 by Nicola Rider.
Proudly created with Wix.com

 

bottom of page