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跳躍系アスリートは“走り込みの必要性?走幅跳、走高跳、棒高跳、三段跳

  • 執筆者の写真: 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
    森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
  • 5月6日
  • 読了時間: 5分

跳躍系アスリートは“どれだけ走るべきか”?


〜ジャンパーにとっての走り込みの価値を再考する〜


陸上競技のなかで「跳躍」と呼ばれる種目――走幅跳、走高跳、棒高跳、三段跳。これらはジャンプ力やタイミング、空中動作の技術が問われる種目であり、いわば“跳ねる能力”が最も試される分野です。


では、そんな選手たちに「走り込み」が必要か?と問われたとき、多くのジャンパーや指導者は迷います。


「長く走るより跳ぶ練習をしたほうがいいのでは?」

「跳躍に必要なのは瞬発力。長距離的な走り込みは意味がないのでは?」


そうした声がある一方で、冬場になるとやはり「走っておけ」という指導も多く見られます。実際のところ、ジャンパーに走り込みは必要なのか?あるいは、どのように活用すべきか?


このブログでは、走り込みの意義と注意点を、跳躍選手という特性から見直していきます。


跳躍種目の土台は“助走力”


まず、どの跳躍競技にも共通しているのが「助走から踏切へ」という流れです。つまり「走る→跳ぶ」という運動連鎖のなかにジャンプが含まれているのです。


ジャンパーにとって助走は単なる準備ではありません。それ自体が記録を左右するパフォーマンス要素です。

• 助走スピードが上がれば、より大きなエネルギーを踏切に伝えられる

• 助走リズムが安定すれば、踏切位置やタイミングの再現性が高まる


よって、「走る能力」を磨くことは、跳躍能力を磨くことと表裏一体なのです。


そもそも「走り込み」とは何か?


ここで言う“走り込み”とは、一般的に以下のような持久走系のトレーニングを指します。

• ジョギングで長距離を走る

• 1000m以上の距離を繰り返すインターバル走

• クロスカントリーや坂道走などの負荷走


これらはスプリンターや中長距離選手が、オフシーズンや冬季に基礎作りとして行うのが一般的です。


では、跳躍選手にも同じように必要なのでしょうか?


跳躍選手が走り込みを取り入れる理由


● 1. 全身持久力・心肺能力の底上げ


ジャンパーも、1回のジャンプで全エネルギーを使い切るわけではありません。試技は複数回ありますし、練習や競技時間は長時間に及ぶこともあります。


そこで役立つのが、走り込みによる基礎的な体力の強化です。ジョグやロングランを行うことで、心肺機能が高まり、疲れにくい身体を作ることができます。


これは「跳躍そのものの能力」とは少し異なる軸ですが、練習や試合の集中力を維持する土台になります。


● 2. 走るフォームの確認と調整


ある程度ゆとりのあるペースで長めに走ることで、「走りの姿勢」や「足の接地感覚」を確認しやすくなります。助走が安定しない選手は、そもそも走り方に癖がある場合が多いです。


走り込み中に、骨盤の位置・上半身の振り・足の抜きなどを丁寧に意識することで、結果的に助走の再現性が高まるという効果が期待できます。


ただし「量」や「目的」を誤ると逆効果に


一方で、走り込みには落とし穴も存在します。


● 1. スピードの質が落ちる


跳躍選手にとって大切なのは、瞬間的に高い力を発揮する速筋の働きです。しかし長時間・長距離の走り込みをしすぎると、筋線維の性質が変わり、速筋の反応速度が鈍くなるリスクがあります。


これは助走での加速が鈍くなるだけでなく、踏切の爆発力も落ちてしまう危険性があります。


● 2. 動きの精度が下がる


長距離走では、無意識に省エネで走る動作に切り替わるため、助走とは異なる走りの癖がついてしまうことも。特にリズムやピッチ、腕の振りのタイミングなどが崩れると、シーズン中に戻すのが大変になります。


「走り込み=悪」ではない。ただし“走り方”を選べ


ここで考えておきたいのは、跳躍選手にとって「走る」という行為の目的をどう設定するかという点です。


走り込みには多様なスタイルがあります。たとえば――

• テンポ走(150〜300m): リズムと持久力を両立

• ショートインターバル(60〜100m): スピード持久力と加速の維持

• フォーム走: 動きのチェックと感覚磨き


こういった走りであれば、跳躍選手の能力に直結する要素を維持しながら、走り込みのメリットも得られます。


実際の跳躍選手たちはどうしているのか?


多くのトップジャンパーたちも、冬場には「走る練習」を積極的に行っています。ただし、その中身はジョグ中心ではなく、以下のような内容が多いです。

• ダッシュ系トレーニング(30〜60m)

• ジャンプサーキット(連続ジャンプなど)

• パワーラン(メディシンボールを持って走るなど)


彼らが大事にしているのは、「走る距離」ではなく「走る質」です。競技動作に直結する走りを積み重ねているのです。


まとめ:走り込みは“選んで”取り入れよう


跳躍選手にとって走り込みは、万能な練習ではありません。しかし、うまく使えば大きな武器にもなります。


ポイントは次の3つです。

1. 走り込みの“目的”を明確にする(体力?フォーム?)

2. スピードや爆発力を落とさないような距離・質を選ぶ

3. ジャンプの練習と競合しないよう時期・頻度を調整する


「跳躍=跳ぶ力」ではなく、「跳躍=走って跳ぶ力」であることを意識すれば、走りのトレーニングの重要性が自然と見えてきます。


この冬、“走り込み”という言葉の意味を、自分なりに再定義してみてはいかがでしょうか?


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