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練習せずにイメージトレーニングだけで人間は速く走れるようになるのか?

  • 執筆者の写真: 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
    森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
  • 6月23日
  • 読了時間: 5分

練習せずにイメージトレーニングだけで人間は速く走れるようになるのか?


「イメージするだけで足が速くなる」

もしそれが本当なら、あれこれ走り込みや筋トレをしなくても、誰でも速くなれる夢のような話です。


現代のスポーツ科学やメンタルトレーニングでは、“イメージトレーニング”の有効性が認められており、トップアスリートも取り入れています。しかし、果たしてまったく練習をせずに、イメージだけで速く走ることはできるのか?


この記事では、イメージトレーニングの仕組みや効果、そして「本当に足が速くなるのか?」というテーマを、スポーツ科学の視点からわかりやすく解説していきます。


イメージトレーニングとは?


イメージトレーニングとは、体を動かさずに「頭の中で動作を思い描く」ことで、技術や集中力を高めるメンタルトレーニングの一種です。英語では「Mental Imagery(メンタル・イマジェリー)」とも呼ばれ、トップアスリートだけでなく、音楽家や手術を行う外科医も活用しています。


たとえば100m走の選手が、スタートのピストル音が鳴り、加速してゴールまで走る姿を頭の中で何度も思い描くことで、実際の動作をスムーズに行えるようにするのがその典型です。


イメージの内容が「正確」で「リアル」であるほど、脳の神経活動が実際の動作に近づくことが知られています。つまり、イメージだけでも“ある程度”脳は体を動かしているのと同じように反応するのです。


科学的に認められた効果とは?


近年の脳科学や運動生理学では、イメージトレーニングの以下のような効果が実証されています。


① 脳神経回路の強化


イメージによって、脳の中で「動作を指令する神経ネットワーク」が活性化されます。特に、運動を計画し実行する脳領域(運動野、補足運動野、小脳など)が活発に動くことがMRIなどでも確認されています。


② 動作の精度が向上


動きを何度もイメージすることで、フォームの記憶が定着しやすくなり、実際の動作も無駄が減ります。これは初心者よりも、ある程度正しいフォームを理解している人にとって効果的です。


③ 緊張のコントロール


試合や運動会など、本番で緊張しやすい人にとって、事前に成功のイメージを繰り返すことはリラックスや集中力アップに効果があります。


こうした理由から、イメージトレーニングは「実際のパフォーマンス向上に役立つ」と多くの研究で認められています。


では、練習ゼロでも速く走れるのか?


ここが本題です。


結論から言うと、イメージトレーニングだけで「走るスピード自体」が大きく向上することはありません。


なぜなら、「走る速さ」は以下のような複数の身体的要素によって成り立っているからです:

• 地面を強く押すための脚力・筋力

• 爆発的なパワー(瞬発力)

• 正しいフォームやリズム感

• 関節の柔軟性

• 神経と筋肉の協調性

• 実際の感覚(地面の反発、風、重心移動)


これらは体を動かし、負荷をかけてトレーニングすることでしか鍛えられません。イメージで脳が活性化しても、筋肉がついたり、走りのフォームが体に染み込むわけではないのです。


つまり、イメージトレーニングは補助的には効果があるが、メインのトレーニングにはなり得ないということです。


それでもイメージは「速くなる練習の一部」


とはいえ、「イメージだけでは無理」と切り捨ててしまうのはもったいない話です。


イメージトレーニングには以下のような使い方があります。


● フォームの修正や確認


動画や鏡で自分の走りをチェックし、正しいフォームをイメージすることで、実際の走りの質が変わってきます。


● 怪我や疲労時のトレーニング補完


怪我で動けない期間にイメージを行うことで、回復後の再スタートがスムーズになる例も多くあります。


● 本番前のルーティンとして


試合や競技前に「スタートからゴールまでの成功イメージ」を反復することで、集中力や自信を高める効果があります。


つまり、「イメージトレーニングだけで速くなる」は難しいものの、「イメージをうまく使えば、実際の練習効果を何倍にも高められる」可能性は大いにあります。


子どもや初心者にとってはどうか?


小学生や走りに慣れていない人にとっては、イメージトレーニングの効果は限定的です。


理由はシンプルで、「正しい動きを知らない状態では、正しくイメージできない」からです。たとえば、間違ったフォームをイメージしてしまえば、それが定着してしまい、逆効果になる場合もあります。


そのため、最初は正しい動きを見たり、教えてもらったりして、動きの理解を深めたうえでイメージトレーニングを取り入れるのが理想です。


まとめ:イメージは魔法ではない。でも使い方次第で武器になる


「練習せずに、イメージトレーニングだけで速くなることはできるのか?」


この問いに対する答えは、

「いいえ、イメージだけでは速くなれない。でも、練習の効果を最大化する手段としては非常に有効」です。


スポーツに限らず、何かを上達させたいとき、「ただやみくもに体を動かすだけ」では効率が悪いことがあります。自分の動きを客観的に見つめ、イメージし、それを練習に活かすことができれば、上達のスピードも結果も大きく変わります。


本気で速くなりたいなら、「走る練習」と「イメージトレーニング」を両方組み合わせる。

これが、誰でもできる“現実的で効果的な最短ルート”と言えるでしょう。



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