情報の多さが仇になる?トレーニングの迷走が子どもの「足の速さ」を奪っている
- 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
- 6月29日
- 読了時間: 4分
インターネットやSNS、YouTube、書籍、スクール…。現代は、足を速くするための情報があふれています。「この筋トレが効く!」「このフォームが正解!」「この走り方をすれば100mが1秒縮む!」そんな刺激的な言葉が溢れ、親も子どもも「何が本当に効果的なのか」わからなくなってきています。
その結果、情報を追いすぎて「いろんな練習を次々試す」ばかりになり、トレーニングに一貫性がなくなってしまっている子が増えているのです。そして、残念ながら「一生懸命練習しているのに足が速くならない」という事態に陥ってしまうのです。
本記事では、この“情報過多”が子どもの足の速さにどのような影響を及ぼしているのか、そしてどうすれば本当に速くなれるのかを解説していきます。
情報を得る手段が増えすぎた現代
スマホ1台あれば、誰でもプロ選手の練習方法を見られる時代になりました。「小学生でもできるスタートダッシュ練習」「10秒台ランナーのフォーム解説」などの動画は一見とても魅力的です。
また、親世代の多くは「わが子に足が速くなってほしい」と願い、ネット検索を繰り返し、いろんな情報をメモして練習に取り入れます。意識の高いこと自体は素晴らしいのですが、問題は「情報の整理と取捨選択ができていないこと」にあります。
練習内容がコロコロ変わる「迷走型トレーニング」
例えば、ある週は「もも上げが大事」と聞けば、毎日ひたすらもも上げをやらせる。
次の週には「股関節を柔らかくすれば速くなる」と聞いて、今度はストレッチばかり。
また別の動画で「上半身の振りが重要」と言われ、腕振りトレーニングに切り替える。
こうして、練習がコロコロと変わってしまうと、子どもの体は“何を身につければいいか”を覚えきれません。運動神経が育つ小学生のゴールデンエイジにおいては、「反復練習による動きの定着」が最も重要です。
練習内容が毎週変わるようでは、せっかく身につきかけたスキルがリセットされてしまいます。
子どもは「どれが正解かわからない」と混乱する
情報を与えている大人は善意でも、子ども自身はこう思っています。
• 「昨日は腕を振れって言われたのに、今日は膝を高く上げろって言われた…」
• 「どれを頑張ればいいの?」「どう走ればいいの?」
このように、混乱してしまうのです。成長途中の子どもにとって、「軸がブレる」ことは大きなストレスになります。
たとえ小学生でも、「今やっている練習の意味」「どうつながって速くなるのか」が腑に落ちていないと、集中して取り組めません。あれこれやっても成果が出ないことで、「自分は才能がないのかも」と思ってしまう子もいます。
「一貫性のある練習」が足を速くする
足が速くなる子には、共通点があります。それは「ある程度同じテーマの練習を継続してやっていること」です。たとえば、3週間はスタートダッシュに特化してトレーニングし、その後にピッチ(足の回転数)にテーマを移す、というふうに段階を踏んで練習を重ねています。
トレーニングには「計画性」「積み上げ」が必要です。筋力・神経・柔軟性・走りのリズム…これらは一朝一夕で身につくものではありません。
情報に振り回されてしまうのではなく、「この子には今、これが必要」と見極めて、信じて一定期間続けることが重要なのです。
大切なのは「正しい情報」より「正しく使える情報」
情報が多すぎて迷うのは、大人側の「安心したい気持ち」や「不安を埋めたい気持ち」が原因であることも多いです。
「この方法は効果あるのかな?」
「本当にこの練習で速くなるのかな?」
そんな不安から、つい新しい情報を取り入れたくなるのは当然です。ですが、トレーニングにおいては「最新情報=正解」とは限りません。
むしろ、子どもの成長段階や運動歴、性格に合わせて“どう落とし込むか”が重要なのです。どんなに有名な理論でも、本人に合っていなければ意味がありません。
情報を探す前に、「今やっている練習をまずやり切ったか?」「その練習の目的を本人が理解しているか?」を確認してみてください。
情報との付き合い方を学ぶ時代に
今の子どもたちは、「情報との付き合い方」を身につけなければならない時代に生きています。それはスポーツにおいても同じです。
情報に振り回されるのではなく、「この練習をやってみよう。3週間だけ本気でやってみよう」と自分で決めて続ける力。うまくいかないときも「やり方を変える」のではなく、「精度を上げる」ことで突破する力。それが、足を速くするうえで本当に大切な“力”です。
まとめ:迷うより、まず「やり抜く」
情報が多い今の時代では、「迷わないこと」ではなく「迷った時にどうするか」が問われます。
• あれこれ変えるより、まず一つの練習をやり切ること
• 情報を信じるより、自分の成長を信じること
• 子どもの反応や動きを見て、微調整しながら継続すること
子どもたちは、まだまだ成長の途中です。正しい方向に“やり続ける”ことで、必ずスピードは上がっていきます。
迷いすぎて練習に一貫性がなくなってしまっている今だからこそ、大人が「ぶれない軸」を持って、子どもの努力を支えていきたいですね。
。
コメント