小さい時の体の動かし方が、大人になるとできなくなる理由とは
- 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都

- 7月22日
- 読了時間: 4分
子どもの頃は、走る・跳ぶ・転がる・しゃがむなど、さまざまな動きを自然に行えていたはずです。ところが大人になるにつれて、「しゃがむと踵が浮く」「走ると体が重い」「前転が怖い」など、かつては難なくできていた動作がいつの間にか苦手になっていることに気づきます。
なぜ、あんなに自由に動けていた体が、大人になると不自由になるのでしょうか?本記事ではその理由を、運動機能、筋力、可動域、神経系、心理面などのさまざまな視点から深掘りしていきます。
1. 可動域(柔軟性)の減少
まず1つ目の要因は、関節の可動域が減少することです。
子どもは関節や筋肉の柔軟性が高く、あぐらをかいたり、地面にしゃがみこんだりする姿勢が自然にできます。たとえば和式トイレやしゃがんだ姿勢で遊ぶことも、全く問題なくこなせます。
しかし大人になるにつれて、関節まわりの筋肉や腱が硬くなり、柔軟性が落ちて関節の動く範囲(可動域)が狭くなるのです。特に股関節・足首・肩関節などは動きが悪くなりやすく、「しゃがめない」「腕がまっすぐ上がらない」といった動作の制限が出てきます。
この柔軟性の低下は、加齢や筋肉の質の変化、さらには運動不足が大きく関係しています。
2. 神経と筋肉の連動(コーディネーション能力)の低下
子どもの頃は、神経系が急激に発達する時期です。特に3〜12歳ごろは、運動神経のゴールデンエイジと呼ばれ、複雑な動きを身につけやすい時期です。
この時期に身につけた動作は、「無意識レベルで身体が覚えている」ものですが、使わなければ忘れていきます。これは「神経と筋肉の連動」が弱くなるからです。
たとえば、スキップ、ケンケン、両足ジャンプ、バランスをとりながら走るといった一連の動作は、子どもにとっては遊びの中で自然に習得していたものです。しかし大人になると、それらの動作を日常で使う機会がほとんどなくなり、脳と体の連携が鈍くなるのです。
3. 筋力・体幹バランスの低下
大人になると、仕事や学業による長時間のデスクワーク、スマートフォンの使用、車移動などで、運動量が極端に減る傾向があります。
その結果、体を支える筋肉(特に体幹、股関節まわりの筋肉)が弱くなり、正しい姿勢やバランスが保てなくなるのです。
例えば、しゃがんだ姿勢でバランスを取るには、足首の柔軟性だけでなく、腹筋・背筋・お尻の筋肉などの連携が必要です。これらが弱ることで、体の中心がブレたり、支えられなくなったりして、「昔はできたのに今はできない」状態になります。
4. 怪我を避けようとする心理的なブレーキ
子どもの頃は、転んでもすぐ立ち上がる、ぶつかっても笑って済ませる、といった無邪気さがあります。一方、大人になると、怪我への恐れや失敗を避けたい気持ちが先に立つようになります。
特に「バク転」「前転」「鉄棒」など、反転系や逆さまになる動きは、「怖い」「失敗したら痛そう」という心理的ブレーキがかかりやすくなります。この恐怖心が、実際に体を動かすときの動きの硬さやぎこちなさにつながってしまいます。
また「人からどう見られるか」といった羞恥心も、自然な動きを妨げる原因です。
5. 成長による重心の変化と体格の変化
子どもと大人では、体の比率が違います。子どもは頭が大きく、重心が比較的低いので、体が安定しやすく、動きやすさにつながります。
一方、大人になると足が長くなり、重心が高くなるため、バランスをとるのが難しくなる傾向があります。さらに体重も増えることで、昔と同じようにジャンプしたりスピンしたりすることが難しく感じるようになるのです。
6. 動く習慣の減少と「動きの貯金」の消失
運動能力は、使えば維持・発達し、使わなければ衰えるという性質があります。
小さい頃にたくさん動いていた人でも、大人になって全く運動をしなくなると、「動きの貯金」がなくなり、動けなくなっていきます。
これはまさに「筋肉は裏切らないが、さぼると衰える」状態。何年も運動していない人が突然昔のように走ろうとしても、関節や筋肉がついてこないため、思い通りに動けないのです。
7. 現代のライフスタイルによる姿勢の崩れ
スマートフォンやパソコンの普及によって、猫背やストレートネック、骨盤の後傾といった姿勢の崩れが大人に増えています。
姿勢の崩れは、体の動きに直接影響を与えます。背中が丸くなっていれば腕は上がりにくくなり、骨盤が歪んでいれば足も動かしにくくなります。
子どもは遊びや生活の中で自然と姿勢をリセットする機会がありますが、大人は意識して動かない限り、悪い姿勢が定着しやすいのです。
まとめ:子どもの頃の動きを取り戻すには?
大人になるにつれて失われていく「自然な動き」を取り戻すには、次の3つのポイントが大切です。
1. 柔軟性を取り戻すストレッチやモビリティトレーニング
2. 体幹・バランス力を鍛える運動(ヨガ、ピラティス、体操など)
3. 子どものように自由に体を動かす遊びや運動を意識的に取り入れる
何歳からでも体は変えられます。子どものような自由な動きを取り戻すには、「遊ぶように動く」ことが最大の近道です。

コメント