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背中を曲げながら走るとスタートダッシュは速くなるのか?|姿勢と加速の関係を徹底検証


短距離走のスタートダッシュを速くしたいと考えるとき、多くの人が「腕の振り」や「足の動き」に注目しますが、実は「背中の角度」や「姿勢」も大きな影響を及ぼします。特に、スタートの瞬間に「背中を曲げた姿勢」が速さに関係するのかどうかは、陸上競技に限らずスポーツ全般においても気になるポイントです。


今回は、「背中を曲げながら走るとスタートダッシュは速くなるのか?」について、 biomechanical(バイオメカニクス)、実践、トレーニング、スポーツ現場の視点など、さまざまな角度から検証していきます。


1. スタート時の「前傾姿勢」と「背中の丸み」は違う


まず大前提として、「前傾姿勢」と「背中を曲げること」は似ているようで違う動きです。

• 前傾姿勢とは、股関節から身体を前に倒し、背筋はある程度まっすぐを保ったまま重心を前方に移動させる姿勢。

• 背中を曲げるとは、胸椎や腰椎を丸めて、猫背のような状態になる姿勢。


短距離走のスタートでは、重心を前に乗せるために「前傾姿勢」が推奨されますが、だからといって「背中を丸めること」が必ずしも有効とは限りません。


2. 背中を曲げることで得られるメリットとは?


では、背中を曲げた状態でスタートを切ることに、どんなメリットがあるのでしょうか?


メリット1:重心を前に持っていきやすい


背中を曲げると自然と頭の位置が前に移動し、重心が前方に乗りやすくなります。これにより、静止状態から前に倒れ込む動きがスムーズになり、スタートダッシュの第一歩が出やすくなる可能性があります。


メリット2:上体のコンパクト化


背中を丸めることで、身体の「かさ」が小さくなり、重心移動がより滑らかになります。これは特に体が大きめの選手が使うテクニックとして注目されています。


3. 背中を曲げることのデメリットとリスク


しかし、背中を曲げたスタートにはデメリットや注意点もあります。


デメリット1:パワーの伝達効率が下がる


スタートダッシュでは、足の力を効率よく地面に伝え、それを上半身に連動させることが重要です。背中が丸くなると、この「力の連動」がうまくいかず、地面を押す力が推進力に変換されにくくなる可能性があります。


デメリット2:姿勢の修正に時間がかかる


背中が曲がった状態から、加速期に入って身体を徐々に起こしていく際、必要以上に時間がかかると、その間にスピードが伸び悩むことがあります。つまり「スタートは良かったが、その後の加速で失速する」という結果になりかねません。


4. 実際のトップスプリンターはどうしているのか?


ウサイン・ボルトやクリスチャン・コールマンなど、世界のトップスプリンターのスタート映像を見ると、確かに背中はある程度「丸まっている」ように見えます。しかしそれは、骨盤をしっかり前傾させて、股関節から前に倒れていることで自然とそう見えているだけであり、意識的に「猫背」にしているわけではありません。


つまり、**意図的に背中を曲げているのではなく、必要な角度をつけた結果として「やや丸まったように見える」**というのが正確です。


5. 競技別に見る「背中の曲げ」とスタート


陸上短距離


最初の加速3歩で一気にトップスピードへ近づく必要があるため、股関節からの強い前傾は必須。背中を意識的に曲げるというより、「自然な前傾姿勢」を作ることで速さが引き出されます。


サッカーやラグビー


瞬時の反応と横方向の切り返しが必要な場面では、やや背中を丸めた姿勢から動き出す選手も多くいます。これは「低い姿勢=安定性」が必要だからです。ただし、それでも胸を張った姿勢を保つことが基本です。


6. トレーニング現場での検証と指導法


トレーニング現場では、「背中を丸めたスタート」から「背中を立てたスタート」まで、さまざまなバリエーションでスタート練習を行い、タイムや加速感を比較することがあります。


実際に、

• 背中を立てすぎると、後ろ重心になり遅れる

• 背中を曲げすぎると、足が前に出にくくなる


という結果になることが多く、最も速いスタートを切れるのは「骨盤から倒した自然な前傾+背中はフラットに近い」姿勢が多いです。


7. 結論:速くなるのは「背中を曲げる」からではない


以上の検証から言える結論は、


スタートダッシュが速くなるのは「背中を曲げる」こと自体が要因ではなく、「正しい前傾姿勢」を作ることで、結果的に背中が少し丸まることがある


ということです。


むしろ、背中だけを意識的に丸めてしまうと、かえってスピードが落ちる原因になります。速いスタートを目指すなら、

• 骨盤を立てて前傾を作る

• 背筋はできるだけフラットに保つ

• 自然な猫背ならOK、意図的な丸め込みはNG


という点を意識してトレーニングしていきましょう。


まとめ


「背中を曲げながら走るとスタートダッシュは速くなるのか?」というテーマは、一見シンプルですが非常に奥が深いものです。重要なのは、背中を丸めることが目的ではなく、速く走るために必要な姿勢を作った結果として背中の角度が決まるということ。


ぜひこの記事を参考に、あなた自身のスタートフォームを見直し、より速く、より力強いスタートを手に入れてください!



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