「最新式」に振り回されるな:フィットネス業界が作る資本主義の罠
- 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
- 7月18日
- 読了時間: 4分
私たちが日々目にするフィットネス広告やトレーニング器具のPR。そこには決まって「最新式」「これまでにない」「話題沸騰」といった言葉が並びます。ダイエットから筋トレ、パフォーマンス向上まで、次々と登場する“新しい”メソッドや器具。多くの人は「これなら結果が出そう」と飛びつき、また次の“話題”が出れば乗り換える。その繰り返しの中で、私たちは本当に「効果」を得ているのでしょうか?それともただ消費を繰り返しているだけなのでしょうか?
本記事では、フィットネス業界やトレーニング器具業界が作り出す「話題性」と「資本主義的循環」に焦点を当て、私たちが見落としがちな本質について考えていきます。
■ 「効果」より「新しさ」が優先される現実
「体幹トレーニングが今、来てます!」「このマシン一台で全身が鍛えられる!」「〇〇式トレーニングで10日間で-5kg!」
このような言葉に、心が踊るのは当然かもしれません。人は常に「最短で成果を出したい」「誰よりも効率よく変わりたい」と願う生き物です。しかし、問題はその“最新式”が実際に「効果があるのかどうか」ではなく、「どれだけ話題になるか」に重きが置かれている点です。
広告やSNSでは「科学的根拠があります」といった言葉が使われますが、実際には小規模な実験結果や、都合の良いデータのみを強調するケースも多く見られます。つまり、科学よりも“売れる仕組み”が先にあるのです。
■ トレンドを作って、消費を回す「資本主義サイクル」
フィットネス業界は、単に「健康を提供する産業」ではなく、巨大な市場です。新しい器具、新しいウェア、新しいメソッド…すべては“消費”によって成り立っています。
たとえば、ある器具メーカーが新しいバランストレーナーを発売したとします。それに合わせて、インフルエンサーがSNSで動画を投稿し、「これ、マジで効く」「最近はこれしか使ってない」と発信する。メディアはその波に乗って取り上げ、YouTubeやTikTokで話題になり、店舗やネット通販では品薄に。数ヶ月後、似たような機能を持つ“改良版”が登場し、再び話題に…。こうして消費は繰り返されます。
実は、これが業界の狙いです。「一度売って終わり」ではなく、常に“買い替え”を促すことで市場は成長します。言い換えれば、同じ器具や理論で長く効果を得られてしまっては、業界は儲からないのです。
■ なぜ「古典的なトレーニング」は敬遠されるのか?
興味深いのは、シンプルで地味なトレーニング方法が「古くさい」とされ、敬遠されがちであることです。たとえばスクワット、プッシュアップ、懸垂、ランニングといった基本的なトレーニングは、何十年も前から存在し、科学的にも効果が認められています。しかし、「見た目が地味」「SNS映えしない」「最先端感がない」という理由から、情報の中心には来ません。
皮肉なことに、「古典的」な方法ほど効果が安定しており、長く続けることで結果が出るにもかかわらず、それがメディアに取り上げられることは少ないのです。なぜなら“地味”なものは売れないから。視覚的に派手で、話題性があり、「今しか手に入らない」ような演出がある方が売れる。こうして本当に大事なものが埋もれていきます。
■ 結局、私たちは何を求めているのか?
ここで、問い直したいのは「私たちはなぜトレーニングをするのか?」という点です。健康のため?ダイエットのため?スポーツパフォーマンスの向上のため?
目的が明確であるならば、本来はそれに合った手法を選び、地道に継続することが最も効果的なはずです。しかし、現実は違います。目的がぼんやりしているからこそ、話題性や“流行”に流され、「この器具で痩せたい」「この方法なら楽しそう」と、“体験”や“気分”を優先してしまう。
つまり、私たち消費者もまた「本当の効果」ではなく、「ワクワク感」や「流行に乗る満足感」を求めている側面があるのです。だからこそ、業界はその欲求を刺激し、次の“流行”を提供し続ける。需要と供給が、資本主義の中で一致してしまっているのです。
■ 本質に戻る勇気
では、どうすればこのループから抜け出せるのでしょうか?
答えは意外とシンプルです。「流行」に飛びつく前に、「自分の目的」を見つめ直すこと。そして、地味でも効果がある方法をコツコツと続ける覚悟を持つことです。
もちろん、新しい方法を試すのが悪いわけではありません。しかし、「なぜこれをやるのか?」「本当に効果はあるのか?」「続けられるか?」という視点を持たずに、話題性だけで動いてしまえば、また同じように次の“新しさ”を探すことになります。
筋肉は裏切りません。正しい知識と継続によって、必ず結果は出ます。ただし、それは“映え”とは程遠い、地味で単調な日々の積み重ねなのです。
■ 最後に:あなたが追いかけているのは「効果」ですか?それとも「話題」ですか?
「最新式」と聞くと、どうしても気になってしまうのが人間の性。ですが、その言葉の裏にあるのは“資本主義の仕組み”であり、私たちの健康や目標達成とは必ずしも一致しないことを忘れてはなりません。
最後に自分自身に問いかけてみてください。
あなたが手にしているその器具やトレーニング方法は、「目的を達成するための手段」ですか?それとも「所有することが目的」になっていませんか?
流されるな。踊らされるな。本当に求めているものを見失わないように。
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