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足が速い遅いスプリントの違いは脳の指令が違う?速筋・遅筋は関係ない?

  • 執筆者の写真: 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
    森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都
  • 4月13日
  • 読了時間: 5分

。「スプリントが速い人と遅い人の違いは何か?」

陸上競技やサッカー、ラグビーなど、スピードが求められるスポーツに関わる人なら、一度は気になるこの疑問。

「速筋が多い人は速く走れる」「遅筋が多いと長距離向き」といった筋肉のタイプによる違いはよく語られますが、最近では「脳からの指令の違い」が注目されています。


果たして、スプリントの能力は筋肉の種類だけで決まるのでしょうか?それとも、脳の働きによっても大きく変わるのでしょうか?

この記事では、「脳の指令とスプリント能力の関係」、そして「速筋・遅筋の本当の役割」について詳しく解説していきます。


1. 速く走る=筋肉だけの問題ではない


スプリントにおいて、筋肉は確かに重要です。とくに「速筋」と呼ばれる筋肉は、瞬発的に大きな力を発揮できるため、スタートダッシュや加速局面での爆発力に大きく貢献します。


一方で「遅筋」は、持久力に優れており、長時間にわたって安定して力を出し続けられます。そのため、マラソンやロードバイクなどの持久系競技に向いています。


では、速筋が多ければスプリントが速くなるのか?

これは「半分正解、半分不正解」です。


なぜなら、筋肉が持っている能力を最大限に引き出すためには、「脳と神経の指令」が非常に重要だからです。筋肉がいくら強くても、適切なタイミングで正しく使われなければ、本来の能力は発揮できません。


2. スプリントにおける脳の役割


私たちが走るとき、脳は無意識のうちに全身に指令を出しています。


・どの筋肉を使うか

・どのタイミングで収縮させるか

・どれくらいの力を出すか


これらすべてが「脳の判断と指令」で行われているのです。つまり、スプリントで速く走るには「脳がどれだけ速く・的確に指令を出せるか」が極めて重要です。


たとえば、足を速く動かす「ピッチ(回転数)」を上げようとした場合、単純に「脚の筋肉が強ければいい」わけではなく、

・地面に着いた瞬間に即座に反発を返す

・無駄な力を抜いて素早く切り替える

といった“神経的なコントロール”が求められます。


また、スタートや加速時には、ほんの0.1秒の差で順位が入れ替わるため、「反応速度」や「動作の切り替えの速さ」など、脳のスピード処理能力も問われるのです。


3. 実は速筋・遅筋は「どちらが多いか」より「どう使えるか」


速筋と遅筋の比率は、ある程度は遺伝で決まると言われています。

トップスプリンターの多くは速筋繊維の割合が高く、それが彼らの爆発的な加速力につながっているのは事実です。


しかし、重要なのは「比率」よりも「使いこなせているかどうか」です。


例えば、速筋がたくさんあっても、それを使うタイミングや協調性が悪ければ、力がうまく地面に伝わらず、スピードが出ません。

逆に、速筋がそれほど多くなくても、神経系が発達しており、的確な動作ができれば、高いレベルでスプリントができることもあります。


これは「力を出す能力」よりも、「力を効率よく使う能力」が重要であるということです。そしてその“効率”を決めているのが、脳と神経の働きなのです。


4. スプリント能力は「脳×神経×筋肉」の掛け算


スプリント能力を考えるうえで、「脳・神経・筋肉」の3つの要素は切っても切り離せません。

• 脳:意図的に体を動かす・動作をイメージする・反応する

• 神経:脳からの指令を素早く筋肉に伝える(神経伝達速度)

• 筋肉:実際に体を動かす実働部隊


この3つの連携がスムーズに、かつ高速に行われることで、初めて「速く、美しく、効率よく走る」ということが可能になります。


つまり、「速筋の量が少ないから自分は速くなれない」と諦めるのは間違いです。

脳と神経のトレーニングを通じて、今ある筋肉を最大限活かせるようになれば、誰でも今より速く走ることはできるのです。


5. 具体的に鍛えるべき“脳・神経系”のトレーニング


では、どうやって「脳の指令の質」や「神経系の反応スピード」を高めればいいのでしょうか?


(1)スプリントドリル(動きのパターン学習)


走りの基本動作を分解して反復するドリルは、脳に正しい動作パターンを刷り込む効果があります。

特に「ハイニー」「スキップ」「バウンディング」などのドリルは、神経と筋肉の協調性を高めるのに非常に効果的です。


(2)反応トレーニング


スタートの合図に即反応する練習(笛や手拍子)や、ランダムな動きに対する瞬発的な判断トレーニングも効果的です。

これにより、脳の処理スピードが高まり、実際の競技中でも瞬時に対応できるようになります。


(3)イメージトレーニング


実際に動かなくても、頭の中で動作をイメージすることで、脳は“疑似的な神経刺激”を受け取ります。

トップアスリートの多くは、レース前に繰り返しイメージトレーニングを行うことで、脳の準備状態を高めています。


6. まとめ:スプリントは「脳から始まる」


スプリントの能力は、決して「筋肉の種類だけ」で決まるものではありません。

脳がどれだけ正確に、素早く、無駄なく筋肉をコントロールできるか。これこそが、スプリント能力を左右する最大の要因です。


もちろん速筋・遅筋の特性は存在し、それぞれに合ったトレーニングが必要ですが、

「脳×神経×筋肉」の連携が整えば、誰でも「今より速く」なることは可能です。


スプリントの本質は、「どれだけ筋肉があるか」ではなく、「それをどう動かせるか」。

まずは脳を鍛えるトレーニングから始めてみましょう。




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