桐生祥秀選手と清水空跳選手の走りの違いと似ている部分とは?
- 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都

- 8月7日
- 読了時間: 4分
桐生祥秀選手と清水空跳選手の走りの違いと似ている部分とは?
陸上短距離界で活躍する選手たちは、それぞれ独自の走りのスタイルを持っています。今回は、日本人初の9秒台を記録した桐生祥秀選手と、近年注目を集める新星清水空跳(そらと)選手の走りを比較し、それぞれの違いと共通点を丁寧に見ていきましょう。
■ 桐生祥秀選手の走りの特徴
桐生選手の最大の武器は、スタートから中盤までの加速力とテンポの速さです。
● ピッチ型の走り
桐生選手は典型的な「ピッチ型(回転型)」のスプリンターです。1秒間に刻む歩数(ストライド数)が非常に多く、トップスピードに到達するまでの時間が短いのが特徴です。細かく速い足運びと、地面をしっかり押す感覚を両立させており、20m〜60mの区間で特に強さを発揮します。
● 腕振りとリズム感
彼の走りを支えているのが正確で力強い腕振りです。足の動きと完全に同期し、リズムが崩れません。このリズム感が、桐生選手の安定した走りにつながっています。
● ラストの伸びは課題
一方で、ラストの100m全体では、海外のストライド型選手に比べて少し伸びが弱いという課題もありました。これは彼自身も認識しており、ピッチに加えてストライドの拡大や地面の押しを改善し続けています。
■ 清水空跳選手の走りの特徴
清水空跳選手はまだ若い選手ながら、非常に完成度の高いフォームを持ち、将来が楽しみな選手です。彼の走りの特徴はスムーズで力強いストライドです。
● ストライドとピッチのバランス型
清水選手は「ピッチ型」ではなく「バランス型(ストライドとピッチの中間)」といえる走りです。1歩1歩の幅が広く、脚がしっかりと後ろまで流れ、空中での滞空時間も長めです。それでいてテンポが遅れることもなく、効率的な加速を実現しています。
● 上半身の柔らかさ
清水選手のフォームで目を引くのは、首や肩まわりのリラックスです。無駄な力みがなく、上半身がスムーズに動くことで、足に余計なブレーキがかかりません。この滑らかな動きが、彼のストライド効率を高めています。
● スタート局面はこれからの課題
一方、スタートから10mの爆発的な加速では、桐生選手ほどの鋭さはまだありません。今後のフィジカル強化やスタート技術の習得により、さらなるタイム短縮が期待されます。
■ 似ている部分:地面の押しと接地の技術
走りのタイプこそ異なりますが、**2人に共通しているのは「地面の押し方の上手さ」**です。
• 桐生選手は、足の回転が速いだけでなく、一歩一歩をしっかり地面に打ち付け、地面反力を使って推進力に変えています。
• 清水選手も、柔らかい接地の中に芯があり、足裏全体を使って力強く地面を押す走りが特徴です。
さらに、接地時間の短さと反発の使い方も共通しています。単に「速く足を回す」「大きく足を出す」だけではなく、「効率的にエネルギーを使い、無駄のない接地」を両者とも体現しています。
■ 走りの違いと活かし方
比較項目 桐生祥秀選手 清水空跳選手
タイプ ピッチ型 バランス型
スタート 非常に鋭い まだ成長段階
ストライド幅 小さめ(ピッチ重視) 大きめ(推進力重視)
接地の技術 高い 高い
腕振り 正確で強い 柔軟で連動性が高い
フォーム 力強く、緊張感あり 柔らかく、リラックス感あり
このように、両者は異なるタイプのランナーでありながら、どちらも「速く走るための基本」を高いレベルで備えています。
桐生選手はそのまま力で前に進む「爆発力」、清水選手はしなやかに進む「伸びのある加速」が強みです。どちらが優れているという話ではなく、自分の体格・筋力・特性に合った走り方を追求することが大切だということがわかります。
■ まとめ:未来につながる走り
桐生祥秀選手は日本短距離界に革命をもたらした存在であり、今もなお日本代表として第一線で走り続けています。一方の清水空跳選手は、次世代のエース候補として、今まさに進化の途中にあります。
両者の走りは、タイプは違っても「基礎力・接地技術・地面反力の活用」という本質部分で共通しています。これらを若い選手たちが学ぶことで、「自分に合った走り」を見つけていくことができるでしょう。
未来の桐生選手、そして未来の清水選手のようなアスリートを目指して、走りを科学し、実践していくことが、日本の短距離界全体のレベルアップにつながるのです。

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