「少年野球でオーバートレーニング?成長を止めない練習量の目安とは」
- 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都

- 5 日前
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お子さんが毎日のようにグラウンドに出て、練習を頑張っている姿を見ると、保護者としても「このままどんどん上手くなってほしい」「休みなく練習すれば強くなれるはず」と思ってしまうものです。
しかし、実は成長期の少年野球選手にとって、**「やりすぎ=逆効果」**になるケースがあります。
今回は、チーム指導者でもある保護者の皆さんに向けて、練習量と休養のバランスを考え、ケガや成長止まりを防ぐための「オーバートレーニング」について詳しく解説します。
1. オーバートレーニングとは何か?
「オーバートレーニング」と聞いてピンと来ない方も多いですが、スポーツ医学では以下のように説明されています。
• 過度なトレーニングによって「疲労」と「回復」のバランスが崩れ、パフォーマンス低下や体調不良が現れる状態。
• 特に成長期の子どもでは、体がまだ発育途中であるため、許容量を超える練習量・強度・頻度が「成長を妨げる」リスクになります。
• 野球では「オーバーワーク(練習過多)」「オーバーユース(使いすぎ)」がスポーツ障害の原因になりがちです。
つまり、単に「たくさん練習すれば強くなる」という考え方だけではなく、 「どれだけ回復が取れているか」という視点が極めて重要です。
2. なぜ少年野球でオーバートレーニングが起こりやすいのか?
保護者として知っておきたい背景を整理します。
・成長期の体の特殊性
成長期は骨、筋肉、腱、靭帯などが急速に発達・変化している時期です。特に、骨端線や成長軟骨が未成熟であるため、突然の負荷・反復動作・長時間練習などが、痛み・障害・成長抑制を引き起こす恐れがあります。
・野球特有の反復・負荷
野球は投球、バットのスイング、守備・走塁など、反復動作が多く、同じ部位に負荷が集中しやすいスポーツです。特に投手であれば「球数」や「連投」が問題になるケースもあります。
・「量=上達」という指導・保護者の考え方
「慣れない動きをたくさんこなせば上手くなる」という単純な量重視の認識が、疲労の蓄積につながってしまうことがあります。しかも子ども自身が「疲れている」と自覚しづらかったり、休みたくないという気持ちで無理をしてしまったり。
・休養・回復がない・または少ない
練習→試合→また練習…と繰り返す中で、十分な休息日や回復時間が設けられていないと、疲労が蓄積して体・心に悪影響を及ぼします。週2日の休養を推奨する報告もあります。
これらの点から、少年野球の現場では「頑張る」ことがかえって逆効果になる可能性があるのです。
3. オーバートレーニングのサイン(保護者が気付きたいポイント)
お子さんの様子を観察することで、早めに「休むべき」サインをキャッチできます。
• 朝起きても疲労が残っている、寝起きが悪い、体が重い。
• 練習してもパフォーマンスが上がらない、むしろ落ちてきている。
• 食欲がない、体重が減少傾向、身長の伸びが鈍い。
• 特定の部位(肩、肘、膝など)に痛み・違和感があり、それをかばうような動きがある。
• 練習を楽しめていない/練習中に集中力が続かない/練習後にぐったりしている。
• 期間を問わず「休んでも疲れが抜けない」状況が続いている。
保護者としては「疲れているのかな?」「ちょっと変だな?」と思ったら、子どもと話をする・休ませる・チーム指導者と相談するなどの対応が早期解決につながります。
4. 成長期の少年野球における「安全な練習量と休養」の目安
具体的な数値を出すのは難しいですが、成長期の子どもたちにとって「参考になる目安」をいくつか紹介します。
・休養日を確保する
少なくとも 週に2日程度の完全な休養日を設けることが推奨されています。学校・クラブ・家庭の三重負荷を考えると、これが疲労蓄積を防ぐ有効な手段です。
・練習の強度・量を定期的に見直す
練習メニューの中で「今日はいつもよりきつそうだな」「明日も連続で長時間だな」という時は、量や強度を落とすことを検討しましょう。特に長時間練習+集中した反復動作が続く日はリカバリー重視に。
・姿勢・身体の状態・ケガ歴を確認
筋力や柔軟性が十分でないまま高強度・長時間はNGです。体幹・脚力・肩まわり・股関節などの基礎体力があるか、ケガ歴がないかもポイント。
・多スポーツ・多動作を取り入れる
一つの競技・同じ動作ばかり繰り返すのではなく、多様な動きを取り入れて身体バランスを整えることが、疲労・障害予防につながります。
・休養と栄養・睡眠をセットで考える
練習後のケア(ストレッチ・入浴・食事)、良質な睡眠時間の確保が「回復」のために欠かせません。練習量が増える日は、特にケア・睡眠を意識しましょう。
5. 保護者ができること・チームと家庭で取り組むべき対策
保護者ができることは多く、チームと家庭で協力することで選手の健康と成長を守れます。
・日々の変化を観察する
「昨日と比べて元気がない」「最近、肘や肩を気にしている」「食欲が落ちている」など、ちょっとした変化を見逃さないようにしましょう。
子どもの言葉だけではなく、動き・顔色・食事・睡眠などもヒントになります。
・「休む勇気」を持つ
保護者から「休んだほうがいいよ」と言える雰囲気を作りましょう。休む=手を抜く、ではなく「回復して次につなぐ準備」と伝えることが大切です。
・チーム指導者との情報共有
練習内容・練習時間・試合数・休養日数など、指導者とコミュニケーションを取りながら、子どもの疲労サイン・ケガ歴を共有することで、無理のない調整が可能です。
・家庭での回復サポート
良質な睡眠(例えば、小学生なら8~9時間、状況によりそれ以上)・バランスの良い食事(成長期はタンパク質・カルシウム・鉄分を意識)・入浴・ストレッチなど、家庭でのケアが回復促進に直結します。
また、子どもが練習以外でも身体をリフレッシュできるよう「遊び」「ストレッチ」「軽い運動」などを入れることも有効です。
・長期視点での成長を優先する
強くなるスピードも大事ですが、 「何歳まで安心して野球を続けられるか」という視点も同じくらい重要です。
成績・勝利ばかりを目指すのではなく、ケガなく、楽しんで、自信を持って野球を続けられる体づくりを優先しましょう。
6. ケーススタディ:ありがちな3つの誤りと改善策
誤り1:毎日2時間以上の練習+試合+翌日朝練
改善策:週1日以上はグラウンドを離れる日を設定。翌日の練習軽め・キャッチボール中心などを交えて「回復日」に。
誤り2:投手が連日投げ込み+バッテリー練習続きで肩・肘に違和感
改善策:球数制限・連投を避ける。肩・肘に痛み・違和感が出たらすぐキャッチボール量を減らし、肩まわり・体幹トレを補強。チームで「投球数・休養日」のルールを設定。
誤り3:特定の動作・ポジションだけ偏って練習(例:バッターばかり打席に入る)
改善策:守備・走塁・フィールディングなど他動作も入れて、体全体をバランス良く使う練習メニューに。シーズンオフには野球以外のスポーツや体の機能を整える時間を取る。
7. まとめ
「たくさん練習=強くなる」という考え方は、一面真実ですが、 成長期の少年野球においては「回復・休養・成長」という要素が同じくらい重要です。
保護者として「休むこと=悪」ではなく、「休んで回復すること=次の成長につながる」ことを理解し、お子さん・チームに寄り添っていきましょう。
練習量・強度・回復のバランスを保つことで、ケガのリスクを抑えながら、長く楽しく、実力を伸ばしていける環境を作れます。ぜひ、チーム・家庭でこの観点を共有してみてください。

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