厚底シューズで100m走や50m走は速くなるのか?徹底検証!
- 森 雅昭(スポーツ家庭教師/かけっこ走り方教室/体操教室枚方市)
- 7 日前
- 読了時間: 4分
近年、陸上競技の世界で大きな話題となっている「厚底シューズ」。特に長距離やマラソンでは、ナイキのヴェイパーフライシリーズを中心に数々の記録が塗り替えられ、ランニングシューズの進化が注目されています。
では、この厚底シューズは短距離、特に100m走や50m走でも「速くなる」効果があるのでしょうか?本記事では、その疑問について科学的な視点と現場の声を交えながら、詳しく解説していきます。
厚底シューズとは何か?
厚底シューズとは、文字通りソール(靴底)が厚く作られたシューズのことです。特に以下の2つの特徴がポイントです。
1. クッション性の高いミッドソール(主にズームXなどの軽量・高反発素材)
2. プレート(カーボンやナイロン)の搭載による推進力強化
この構造により、着地時のエネルギーロスを抑え、地面からの反発力を前方への推進力として変換しやすくなっています。
長距離と短距離で求められるシューズの違い
長距離:
• 衝撃吸収性が重要
• エネルギーロスの最小化
• 効率的なフォーム維持
→厚底シューズは非常に有効
短距離(100m・50m):
• 爆発的な加速力が必要
• 瞬間的な地面反力の最大化
• 地面を「蹴る」より「押す」力が重要
→この特性に厚底がフィットするかは議論の余地あり
厚底シューズは短距離でも速くなるのか?
結論から言うと、「人によっては速くなるが、誰にでも当てはまるわけではない」です。以下に、その理由を詳しく説明します。
メリット
1. 地面からの反発力が大きい
厚底シューズに搭載されているプレートは、地面を押すときの力をしっかりと反発に変えてくれます。地面に強く圧をかけることができるスプリンターにとっては、その反発がタイムの向上につながることがあります。
2. 足への負担軽減で繰り返しのトレーニングに有利
特にジュニアや高校生レベルでは、足裏の疲労や故障のリスクを抑えながら練習を積み重ねられる点で、厚底は利点があります。
3. 体の前方移動をサポート
プレートとソールの形状により、体が自然と前に進むような感覚を得られるという選手の声もあります。これはストライドの拡大に影響することがあります。
デメリット・注意点
1. 接地が安定しにくい
厚底シューズは「高さ」があるため、短距離特有の爆発的な加速局面では、地面への接地感が不安定になることがあります。スタートダッシュや加速フェーズでは、わずかなバランスのズレがタイムに影響します。
2. 走り方との相性がある
特に「ピッチ型(回転数重視)」の選手にとっては、厚底のクッションが逆に「沈みすぎる」感覚になることがあります。地面を蹴って即座に脚を引き戻すタイプの選手には不利になる可能性があります。
3. スパイクの方が接地時間が短い
100m走では、地面と足が接している時間(接地時間)をできるだけ短くし、爆発的な力で体を前方に弾き飛ばす必要があります。この点では、従来の薄底スパイクの方が優れています。
ジュニア世代(小学生・中学生)にはどうか?
小学生・中学生の短距離走においては、「速くなるか」だけでなく「ケガのリスクを下げるか」も重要な視点です。柔らかいミッドソールは、成長期の足裏への負担を軽減してくれるため、練習用シューズとしてはおすすめです。
ただし、公式競技(特に100mや50m走)では、爆発力を最大限に引き出すためには、従来のスパイクや薄底シューズの方が結果を出しやすい場合が多いです。
実際の使用者の声
高校短距離選手A君の声:
「普段の流しやテンポ走では厚底がすごく楽。でも試合では地面を押す感じが薄くなるから、スパイクの方が記録が出る。」
中学生女子スプリンターBさんの声:
「厚底で練習してたら足が痛くなくなった。でも記録会ではスパイクに戻す。使い分けてる感じ。」
このように、多くの選手は「厚底シューズ=速くなる」と単純に考えるのではなく、「場面によって使い分ける」という意識を持っているようです。
まとめ:厚底シューズは万能ではないが「可能性」はある
厚底シューズは、短距離種目においても一定の効果が期待できるシーンがありますが、それは「走り方」「接地の感覚」「脚力」などの条件により異なります。特に100mや50mといった短い距離では、「反発力よりも接地の速さ・安定性」が記録に直結するため、誰にでも効果があるわけではありません。
おすすめの活用法:
• 練習用として活用(ケガ予防・負担軽減)
• スタートや加速よりも中盤〜後半のスピード維持に使用
• 自分の走りに合うかどうかを試してから使用
厚底シューズは、あなたの走りを進化させる可能性を秘めています。ただし、その効果を引き出すためには、自分の走り方や目的に応じた「正しい選択」が必要です。
あなたの足は、どんなシューズで最も速く走れるか?
一度、試してみる価値はあるかもしれません。
Comments