【子どもが動けない】それは“イップス”の可能性?原因・見分け方・克服法を専門的に解説
- 森 雅昭(かけっこ走り方教室/体操教室枚方市/大阪/京都

- 10月10日
- 読了時間: 5分
「いつもできていた動作が突然できなくなった」「運動のときに体が固まる」「投げようとしても腕が動かない」──。
そんな子どもの変化に気づいたとき、親や指導者は「どうしたの?」と戸惑うかもしれません。
ケガでも病気でもないのに、体が思うように動かなくなる。
それはもしかすると、**“イップス(Yips)”**のサインかもしれません。
本記事では、子どものイップスの特徴・原因・見分け方・克服のヒントを、最新のスポーツ心理学の知見に基づいて解説します。
イップスとは?──体が動かなくなる心理的現象
イップス(Yips)とは、スポーツ動作中に突然うまく体を動かせなくなる現象を指します。
ゴルフ、野球、テニス、バスケットボールなど、繊細な動きが求められる競技で多く見られます。
一見すると「緊張」や「集中力の欠如」に見えますが、実際にはもっと複雑です。
脳・神経・筋肉の連携が乱れ、「動かそう」と意識するほど体が固まってしまう――。
これがイップスの本質であり、心理的要因が身体の運動制御に影響を与えている状態です。
医学的にも、イップスは「心理運動障害(psychomotor disorder)」の一種と位置づけられています。
つまり、心の状態が脳の運動信号に“ノイズ”を加えてしまうのです。
子どもと大人のイップスは違う
イップスと聞くと、プロゴルファーや野球選手の問題と思われがちです。
しかし、子どもにもイップスは起こります。
ただし、子どもの場合は大人と異なる特徴があります。
子どものイップスの特徴
• 発達途中の神経・筋制御:脳や神経が成長段階にあり、運動学習が未完成なため誤作動が起きやすい。
• 言葉で表現できない不安:自分の状態を説明できず、「なんとなくできない」だけが残る。
• 親や指導者の影響を強く受ける:期待・焦り・叱責がプレッシャーとなり、動作を阻害する。
• “失敗の記憶”が残りやすい:一度のミスが強く印象に残り、脳が「またミスする」と誤学習してしまう。
つまり、心理的プレッシャーと発達段階が重なる時期に、イップスが起こりやすいのです。
子どもが運動できないのはイップス?──見分け方のポイント
では、どのように見分ければよいのでしょうか。
以下の特徴が複数当てはまる場合、イップスの可能性があります。
✅ イップスの主なサイン
1. 突然、できていた動作ができなくなった
例:ボールを投げようとすると腕が止まる、スイングが引っかかる。
2. ケガや体調不良では説明できない
病院で検査しても異常がない。
3. 練習ではできるのに試合で動けない
人に見られる状況や“失敗できない場面”で発症。
4. 体が硬直したり、動きがぎこちなくなる
「動かそう」と思うほど、体が固まる。
5. 子ども自身が「怖い」「恥ずかしい」「変」と感じている
心理的抵抗感を伴う。
もしこうした様子が続く場合、焦らず、**「心の問題かもしれない」**という視点を持つことが大切です。
イップスの原因:心と脳の誤作動
イップスの原因はひとつではありません。
心理的・生理的な要因が複雑に絡み合って起こります。
主な原因
• 過度な意識:「失敗したらどうしよう」と考えるほど、体の動きがぎこちなくなる。
• 恐怖・不安の記憶:過去のミスや叱責がトラウマとなり、脳が“防御反応”を起こす。
• 繰り返しの誤学習:誤ったフォームや力の入り方がクセづき、脳が誤動作を記憶してしまう。
• 環境要因:プレッシャーの強い指導、周囲の期待、過度な競争など。
• 自己効力感の低下:「自分はできない」と思い込むことで、本当に体が動かなくなる。
特に子どもは、自分でストレスを処理する力が弱いため、**外的要因(叱責・失敗・他者の目)**の影響が非常に大きいです。
親や指導者ができるサポート
子どもがイップスのような状態になったとき、
最も大切なのは 「無理に治そうとしないこと」 です。
子どもを追い詰めないための行動
1. 「どうしてできないの?」と責めない
→ 子ども自身が一番困っている。責めるとさらに悪化します。
2. プレッシャーを減らす
→ 結果よりも「楽しむ」「挑戦する」姿勢を評価する。
3. 練習量を一時的に減らす・環境を変える
→ 新しい動作環境(場所・仲間・練習法)で脳をリセットできる。
4. 専門家に相談する
→ スポーツ心理士、メンタルトレーナー、運動療法士などが有効です。
5. 小さな成功体験を積ませる
→ 「できた!」の感覚を繰り返すことで、誤作動を上書きしていく。
克服へのステップ:焦らず、段階的に
イップスの克服は、時間をかけて“脳の誤学習”を修正するプロセスです。
すぐに結果を求めず、段階的に進めましょう。
改善のヒント
• リラックス練習:深呼吸や瞑想など、心拍数を整える習慣を。
• ゆっくりした動作から再学習:速さよりも「感覚」を重視して練習。
• イメージトレーニング:頭の中で“できた自分”を繰り返し描く。
• 小さなゴール設定:「今日はフォームを意識する」など、成功を細分化。
• 専門家のサポート:必要に応じて、スポーツ心理学・認知行動療法などを活用。
子どもは脳の可塑性が高いため、適切な支援があれば回復しやすいのが特徴です。
親が持つべき姿勢──「できなくても大丈夫」というメッセージを
イップスは「心が弱い」から起こるわけではありません。
むしろ、真面目で努力家な子ほど起こりやすい現象です。
親が「できなくても大丈夫」「あなたのままでいい」と伝えることで、
子どもは安心し、再び自分の動きを取り戻すきっかけを得ます。
焦らず、責めず、寄り添いながら、
“できるようになる過程”そのものを肯定してあげることが、克服への第一歩です。
まとめ:イップスは“心と体のズレ”を戻すチャンス
子どものイップスは、単なる運動の問題ではなく、心と体のバランスのズレです。
しかしそれは、「自分を理解するチャンス」でもあります。
焦らず、あきらめず、信じて寄り添うこと。
それが、子どもが再び“動ける喜び”を取り戻す最良のサポートになります。

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