運動は「骨を動かし重力を使う」もの|それでも現代人が「筋肉頼り」になってしまう理由
- 森 雅昭(スポーツ家庭教師/かけっこ走り方教室/体操教室枚方市)
- 7月3日
- 読了時間: 5分
運動は「骨を動かし重力を使う」もの|それでも現代人が「筋肉頼り」になってしまう理由
運動とは本来、「骨を動かして、重力を利用する」ものです。
しかし、現代社会における運動の多くは、「筋肉を使い、筋力で動く」ことに偏りがちです。これは一見すると当たり前のようで、実は身体の自然なメカニズムから外れているケースも多くあります。
この記事では、運動において本来活かすべき「骨と重力」の仕組みと、それがなぜ現代で置き去りにされているのかを詳しく解説し、自然な身体の使い方へのヒントをお伝えします。
本来、身体は「骨が動き、筋肉は補助する」ようにできている
私たちの体は、「骨格」というフレームの上に「筋肉」という動力源が付いています。骨は支柱であり、テコとして機能し、筋肉はその骨を動かすための補助装置です。
言い換えると、「骨が主役」であり「筋肉は脇役」なのです。
さらに重要なのが「重力の活用」です。私たちは地球上で暮らしている限り、常に重力を受けて生きています。この重力に逆らうのではなく、うまく「利用する」ことで、無理のない自然な動作が可能になります。
たとえば、ジャンプをする時は、ただ筋力で跳ね上がるのではなく、体重(重力)を一度地面に預けて反発を使い、それを骨で伝えることで上に跳ね上がることができます。これは、動物や子どもの動きを見れば一目瞭然です。
なぜ現代人は「筋肉優先の運動」になりがちなのか?
1. スポーツやトレーニング文化の影響
現代のフィットネスやスポーツ科学では、「筋力トレーニング」が重視されすぎる傾向があります。ジムに通えば、「スクワットで太もも強化」「ベンチプレスで胸筋を鍛える」といったように、筋肉に注目した指導がほとんどです。
もちろん、筋肉の強化は大切です。しかし、筋肉ばかりを意識してトレーニングを続けると、「骨や関節の位置がずれたまま強い力を加える」ことになり、むしろケガや不調を招く原因になります。
2. 子どもの運動指導が「形のマネ」に偏っている
最近の子どもたちの運動指導では、「腕を振る」「膝を上げる」といった動きの表面だけを教えるケースが増えています。本来、体の内側から骨を中心に動かすべきなのに、筋肉で「なんとか動作を再現」しようとしてしまい、ギクシャクした動きになります。
たとえば、走る動作では、骨盤が前に進むように連動すれば、腕や足は自然とついてきます。しかしそれを無視して、腕を「力で」大きく振ろうとすると、逆にバランスが崩れてスピードも落ちてしまうのです。
3. 日常生活の中で重力を感じる動作が減った
エレベーターやエスカレーター、自動ドア、車の移動など…現代の生活は「重力に逆らわずに済むように」どんどん便利になっています。すると、自分の体重を感じたり、地面を踏む・押すといった「重力との対話」が希薄になります。
この結果、身体は自然な軌道や連動を忘れてしまい、「力を使って無理に動かす」ようになります。これが、筋肉ばかりを使いすぎる現代人の動きの癖なのです。
骨を使う動きとはどういうことか?
「骨を使う」とは、ただ力で押したり引いたりするのではなく、関節の軌道に従って、最小限の力で動かすことです。
骨と関節は、もともと「効率よく動くための構造」を持っています。
・股関節は、太ももを大きく後ろに引く構造
・肩甲骨は、腕がしなやかに動くように滑らかに動く構造
・背骨は、しなることで衝撃を吸収し、推進力を生む構造
これらの構造に従い、「骨で動きを作る」ことで、無駄な力を使わず、しなやかに、しかも速く・強く動けるのです。
実際、トップアスリートの多くは、筋肉のボリュームよりも、「動きのしなやかさ」や「重心のコントロール」が秀でています。
筋肉の出番は「骨がうまく動いた時のサポート」
筋肉を否定するわけではありません。むしろ、骨が正しく動いたとき、筋肉はその動きを加速・安定化するための大切なパートナーです。
たとえば、足の骨格がしっかりと支えられた上で、ハムストリングス(太もも裏)が伸び縮みすれば、バネのような弾力が生まれ、効率的な走りになります。
つまり、
• 骨で方向や軌道をつくる
• 筋肉で加速や安定をつくる
という「役割分担」があるのです。
これを逆にして、「筋肉で無理に動きを作る」と、ケガをしやすく、疲れやすく、スピードも出にくくなります。
骨と重力を使うためにできること
では、どうすれば「骨主導・重力利用」の動きに戻せるのでしょうか?
以下のような習慣や意識が役に立ちます。
1. 足裏で地面を感じる
歩くときや立っているとき、足裏で地面を押す感覚を持つことで、重力とのつながりが生まれます。土踏まずの感覚や、かかと・親指・小指のバランスに注目してみましょう。
2. 脊柱(背骨)を柔らかく使う
背骨を意識して動かすことで、骨の軸が整い、他の部位も連動しやすくなります。ヨガや体幹トレーニングで「背骨を波のように動かす」ワークがおすすめです。
3. 子どものように「遊ぶ」動きを取り入れる
ジャンプ、スキップ、しゃがむ、転がる…など、自然な遊びの中には、骨と重力を使う動きが多く含まれています。大人もあえてそういった動きを取り入れることで、体の感覚を取り戻せます。
まとめ|筋肉より「骨」と「重力」が主役だったことを思い出そう
現代の運動は、筋肉を鍛えることにフォーカスされがちです。
しかし、本来の身体の使い方は、骨を中心に、重力を活かして動くもの。
筋力任せの動きは一時的なパワーにはなっても、効率的ではなく、ケガや疲労にもつながります。
「骨が主役、筋肉は脇役」
この原則を思い出すことで、もっとラクに、もっと自然に体を動かすことができるようになります。
体を使うすべての人にとって、この視点が役立つはずです。
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